大丈夫、積んでる

さうざんどますたーになれなくて

夕木春央「方舟」

「要するにこういうことだな?ここを脱出するためには、誰か一人が、この水没しようとしている地下建築に閉じ込められなければならない。
そして、地上に出たとしても、救援を呼ぶにはかなりの時間がかかる。その間は、建物が水没していくのを黙って見ているしかない。だからー
俺らが助かるためには、ここにいるうちの、誰か一人の命を犠牲にしなければならない。誰が地下に残るのか、考えなくちゃいけないね」

これは最後の展開を作り出すために、設計されたお話だなあ。

たぶん誰もがこんな状況に陥るか?と思いながら読むと思う。いや、地下建築に入るという状況以外は、無くはないかもしれない(これが一番問題なんだけど)。普通じゃない状況で殺人事件が起きて、素人が思いつく以上の手がかりがなかったら、先送りしていくのはわからなくもない。
というか、ミステリーのお約束を逆に使っているから、ツッコミどころを感じるのかも。

無理を感じるお話なのに、謎はロジカルに解かれていく。最後のどんでん返しが見事。