好きラノ2018上半期で手にとった本の感想
好きラノ2018上半期の結果を見て、 「 本好きの下剋上 」「86」「薬屋のひとりごと」「 りゅうおうのおしごと!」「 賭博師は祈らない」「 ファイフステル・サーガ 」「 叛逆せよ! 英雄、転じて邪神騎士 」「ノゲノラ」以外、読んだことがなかったので、新作を中心に読んでみた。
まだ積みはあるけど、好きラノ結果から一か月ぐらい経ったので、ちょっと感想書いてみる。
はぐるまどらいぶ。 /かばやきだれ
面白かった。 さすが好きラノ1位。取得した魔法が、誰も聞いたことないような外れ魔法だった、という少女の冒険物語。実際には外れどころか万能なんだけど、それよりも両親や周囲の人の愛情を受けて育ったことを感じらせるまっすぐさや、 苦難に立ち向かう芯の強さ、相棒と共に成長していく姿が、素晴らしい。
いい感じにジュブナイルで、まったく系統は違うんだけど「時載りリンネ」をなんか連想してしまった。
個人的にはAI的な存在である相棒が、ちょっとずつ人の機微を学んでいくところも好み。
錆喰いビスコ /瘤久保慎司
人も街も錆に侵食されている日本で、指名手配された野蛮な男と医師の少年が錆食いを探し求める話。 めちゃめちゃ熱くてカッコいい。 真っ直ぐな冒険譚にワクワクするし、噛み合わない二人が、困難を乗り越えてくうちに……という展開は、まさに少年ジャンプですよ。良い友情ものです。
ひげを剃る。そして女子高生を拾う。 /しめさば

ひげを剃る。そして女子高生を拾う。【電子特別版】 (角川スニーカー文庫)
- 作者: しめさば,ぶーた
- 出版社/メーカー: KADOKAWA / 角川書店
- 発売日: 2018/03/01
- メディア: Kindle版
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まんまタイトル通り、独身男性が家出少女を拾うお話なんだけど、これがすっごい良かった。ふたりの距離感が素晴らしい。タダで止めてもらえるわけがないと覚悟する少女と、ほんとにタダ泊めてるだけの男のすれ違いが、なんとも言えない。家のことをやってくれるって、ほんとすごいありがたいことなんだけど……まあ、気持ち的には難しいかな。
近づきすぎず、でも距離をあけすぎることもないやり取りが素敵でした。
ジャナ研の憂鬱な事件簿 / 酒井田寛太郎
モヤモヤとした違和感から謎を見つけるヒロインと、そのモヤモヤを解く主人公コンビの学園ミステリ。これ大変好きなタイプのお話。言うなれば古典部だけど、ほろ苦い結末とかから、主人公の過去をいろいろ想像させるのもいいですね。何があったのか気になるので、次も読みたくなる。
ハル遠カラジ / 遍柳一
これ好き。 終末の世界で 少女とロボットの旅路を描く物語は、ロボットがロボットらしからぬ感情の持ち主だし、少女もちょっとガサツだし……なんて思いながら読み進めていくうちに見えてくる二人の関係にやられてしまう。ああ、それでこんな距離なんだ、と。 名前を呼んだ時がやばかった。 二人の距離と景色が抜群だった。
スカートのなかのひみつ。 /宮入裕昂
いわゆる学園もの。 真っ直ぐで青臭いし、もうちょっと書きようがある気もするけど、それを吹き飛ばす熱量と勢いのある青春ものだった。これは良かった。読後感がいい。
裏方キャラの青木くんがラブコメを制すまで。/宮入裕昂

裏方キャラの青木くんがラブコメを制すまで。 (角川スニーカー文庫)
- 作者: うさぎやすぽん,前屋進
- 出版社/メーカー: KADOKAWA
- 発売日: 2018/03/01
- メディア: 文庫
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なろうみたいなところでラブコメ小説を書いてるなら恋愛上級者に違いないと勘違いされ、想いを寄せてる人から相談を受けて……からのいろいろなラブコメ展開が楽しい。主人公はグジグジだけど、周りがいい感じに馬鹿で、モリミー的な勢いになっていく青春模様も楽しかった。
他にも
「三角の距離は限りないゼロ」
「Hello,Hello and Hello /葉月文 」
「天才王子の赤字国家再生術 ~そうだ、売国しよう~ 」
「常敗将軍、また敗れる」
「クロス・コネクト 」
「 インスタント・メサイア 」
「 デーモンロード・ニュービー ~VRMMO世界の生産職魔王~ 」
「 ミリオタJK妹! 異世界の戦争に巻き込まれた兄妹は軍事知識チートで無双します 」
「 ぱすてるぴんく。 」
「好きって言えない彼女じゃダメですか? 帆影さんはライトノベルを合理的に読みすぎる 」
あたりを読んだけど、長くなったのでまた今度。
屍人荘の殺人 / 今村 昌弘
ミステリ愛好会の二人と探偵の実績を持つ女子大生が、映画研究部の合宿に参加したら、そこで連続殺人が……というお話。第27回鮎川哲也賞受賞作。
これは面白かった。
ちょっと郊外のペンションとか、なかなかに事件が起きそうなシチュエーションで、そりゃミステリ愛好会なら合宿に参加したくなるのはわかるけれど、まさか陸続きなのに、クローズドサークルが成立するとは思わなかった。そんな手が!と驚き。
死ぬかもしれない状況であえて殺人を犯すのはなぜかという、ホワイダニットに重きを置いた謎解きは、ああなるほどと納得するものがあって(特にエレベータが)、面白かったなあ。
欲を言うならば、死と隣り合わせという状況だけど、探偵や語り手たるワトソン役だけじゃなく、皆が割と事件に対して冷静に動いてるので、そこまで緊張感はないのがちょっともったいないけど、ミステリ展開としては落ち着いてるほうが好きなので、バランスってのは難しいなと思う。
いやでも面白かったので、これはぜひシリーズ化してほしい。
腐男子先生!!!!! / 瀧ことは
イケメンと評判の担任が、実は自分のBLサークルのファンだっという腐男子先生とのオタクトークラブコメ。
「神かよ」「それな!」とテンポよく繰り広げられる会話が、めちゃめちゃ楽しい。普段はクールなのに、語り手の女子高生揚羽といる時のテンションの高さといったら、もう!あるあるネタやら、実際に仲間内で繰り広げられてるような会話に、ニヤニヤしちゃう。
お互い周りにはオタク活動を隠しているからこその秘密の共有ってのが、さらにニヤニヤに拍車をかけてくれて、ああ楽しい。
オタク活動で、大人の財力を見せつける(課金ができる喜び!)先生には大人気なさを感じつつも、楽しいことに対して突っ走るのに、年齢なんてものは関係ないわけで。
むしろ大人になるとで、選択肢が増えるってのは良いことなんだと語り手の女子高生揚羽に伝わっていくところは、ある意味教育者として良いことじゃないでしょうか。いろいろ残念なところも多いのでアレですが。
先生と生徒とはいえ、これだけ仲が良いならば……って思っちゃうわけですが、むろん二人とも意識してるんだけど、いい雰囲気になりそうになると、オタクトークが爆発して、進まないというのが、またにやにやしてしまいますね。
このあともなかなか進まない気がするけど、それもまた良し。
あとは野となれ大和撫子 / 宮内悠介
これ最っ高だった!
沙漠の小国の大統領が暗殺され、議員は逃げ、外圧が強まる混乱の中、残された後宮の少女たちが、臨時政府を立ち上げて、国家をやってみるお話。
後宮といってもそういうものではなく、身寄りのなくなった子供たちの教育場だったので、少女といっても侮れないわけですが、とはいえやはり人生経験はなく、大人の庇護がなくなって初めてわかる外国勢力の圧力に、どうにもこうにも動けなくなったりするんだけど、思考錯誤して、振り回されて、時に子供っぽく爆発して。
シリアスだけど、シリアスすぎず、傀儡政権としようとする大人が思わず動かされてしまうところとか、文化とか人種とかばらばらな人たちがまとまっていくところとか、にやっとしてじんわりして、気づいたら深入りしてました。
あとは野となれっていう思い切りが、たまらなく痛快なエンタメでした。
すっごいよかったおもしろかった。
ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているだろうか(12) / 大森藤ノ
ギルドからの依頼でダンジョン探索するお話。
ダンジョン探索は久しぶりな気がしますが、やっぱり面白いなあ。
ファミリアとしての成長もあり、安定感があるから、冒険でわくわくするし、それでも初めての「下層」ではドキドキするしで、あっという間に引き込まれる。
今回の冒険では、特にベル君が素敵だった。今までにない落ち着きを見せて、男の子から男の人へ成長していく姿は、恰好いいったらない。そりゃ、いろんな人からよりいっそうの好意を寄せられるようになるわけだ。
ただ、成長したのはベルだけでないってのもポイント高い。それぞれが自分のできることを考えて、特に力がなくともファミリアのためにと頑張るリリが素晴らしい。頼れる存在になってくれてうれしいよ。
ダンジョン内では、強化種が進化しはじめて、冒険者を苦しめてきますが、それを打ち破るベルの活躍が、熱くてたまらない。どこまで強くなるんだろう。思わず興奮ですよ。
最後まで面白かったけど、終わりが思いっきり不穏だなあ……

ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているだろうか12 (GA文庫)
- 作者: 大森藤ノ,ヤスダスズヒト
- 出版社/メーカー: SBクリエイティブ
- 発売日: 2017/05/24
- メディア: 文庫
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宝石商リチャード氏の謎鑑定 導きのラピスラズリ / 辻村七子
姿を消してしまったリチャードを追いかけるお話。
正義は情に厚いかもしれないけれど、べたっとした感じではないと思っていたので、リチャードのことを考え続けていく姿には違和感だらけ。こんなBLだったっけ?みたいな。
もしかしてこれは恋なのかと自問するようになるほどだったから、あれれと思ったけど、後々に生い立ちが絡んでくるところで納得。なるほどそれはたしかに正義が、混乱して暴走するわけだ。
リチャードがいなくなったことによる正義の感情の揺れ幅は、かなりの大きさがあったけれど、その混乱の原因を気づかせてくれた人がそばにいるってところに、正義の人間関係の良さがあるよなあ。
リチャードのお師匠さんの性格の良さ(悪さ?)やら、家族の話など、これまで明らかになってなかった過去の因縁は、なんだか時代錯誤ではあるけれど、リチャードならしょうがないと思ってしまう僕がいる。
思いをきめたら、一直線な正義が、リチャードのために動くことで、リチャードもまた過去の因縁にたいする諦めとか逃避とか、そういう気持ちから離れることになったのはよかった。
やっぱりこの二人はこの距離感でいるのが素敵なんですよね。
宝石の絡め方も面白かったし、最後まで楽しかった。

宝石商リチャード氏の謎鑑定 導きのラピスラズリ (集英社オレンジ文庫)
- 作者: 辻村七子,雪広うたこ
- 出版社/メーカー: 集英社
- 発売日: 2017/02/17
- メディア: 文庫
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WORLD END ECONOMiCA(3) / 支倉凍砂
前作からさらに四年。月面の英雄となったが、いまだハガナを忘れられないハルが、さらなる賭けに出たが因縁の男が立ちはだかり……といシリーズ最終巻。
サブプライムやリーマンショックってこういうことだったんだ。いやはや、そりゃやられてしまうわ。ほんとうに失敗が見えない錬金術としか思えないんですもん。
ハルの視点で見てるから、漠然とした不安を感じるけれど、同じ世界に立ってたら、なんとなく投資しちゃうんだろうなあ。こわいこわい。
慎重に見極めができるようになったところに、ハルの成長を感じましたが、でも根っこの部分は変わっていないってのが面白いよなあ。その強さと、その弱さと、ね。
ハガナのことを思いながらも、再会しても踏み込めず、じりじりとじれったいばかりでしたが、一度壁が取れてからの二人は、大変にやにやでした。
どこもかしこも急上昇急降下なお話で、ドキドキが止まらなかったですが、因縁の相手との対決は意外な転がり方をして、これがまた面白かった。
やっぱ物語は、ハッピーエンドがいいね。

WORLD END ECONOMiCA (3) (電撃文庫)
- 作者: 支倉凍砂,上月一式
- 出版社/メーカー: KADOKAWA/アスキー・メディアワークス
- 発売日: 2015/07/10
- メディア: 文庫
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