大丈夫、積んでる

さうざんどますたーになれなくて

異世界詐欺師のなんちゃって経営術(4) / 宮地拓海

やっぱいいよなあ。悪ぶってるくせに実は……っていうお話は。

不作を理由に物価を上げようとする行商ギルドに対抗すべく動くために、わざわざこれはまわりまわって自分の利益になるからと、自分に対して理由付けをして動く主人公の意地っ張りぐあいに、ニヤッとなる。素直になっちゃえばいいのに。

はじめのころはともかく、今となっては周囲の人も主人公の偽悪さに気づいてるから、頼りにするし、助けにもいくんだよなあ。

主人公を中心に四十二区がまとまって、悪役を倒すという展開は、たいへん痛快でした。

Web版既読者としては、ジネットとの関係についても、ふふふとなったし、よかったよかった。

できれば、もっと先のお話も読みたかったなあ。これで終わりってのが残念でならない。

異世界詐欺師のなんちゃって経営術4 (角川スニーカー文庫)

異世界詐欺師のなんちゃって経営術4 (角川スニーカー文庫)

 

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カブキブ!(5) / 榎田ユウリ

いいなあ。クロのまっすぐな熱意は。本当に好きなものだから、周りの人も引っ張られていくんだろうなあ。

三年生の最後の舞台に向けての夏合宿で、舞台慣れしてない一年生を鍛えあげるってお話なんだけど、どう弱点を直すのはどうしたって難しいし、指摘されたら意地になっちゃうしで、なかなか進まないんだけど、クロが言い出したら、そのまっすぐな視線に嘘がないことがわかるから、素直に頷いちゃうんですよね。

ほんと部活仲間って感じの人間関係が良いものだった。演劇部が大変なことになってるから、なおさらそう感じるのかも。

ま、クロの行動にはいろいろ穴があるので、それをサポートする人がいるってのも大きいけど。

にしても最後いい感じにひっぱりましたね。芳先輩が与えられた役をどう演じるのか楽しみでならない。

カブキブ! 5 (角川文庫)

カブキブ! 5 (角川文庫)

 

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スカル・ブレーカ / 森博嗣

相変わらず面白い。

これまでうっすらと見えていたゼンの素性が、唐突に明かされてびっくり。内容じゃなくて、こんなあっさりと明かされたことに対してですが。情というものに重きを置いていない彼だけど、少しずつ変わってきてて、特に師がなくなったことに対して悼む感情を覚え始めたところに、なんかグッとなった。

そういえば、今回はこれまで以上に戦わない話だったなあ。いや戦うんだけど、戦うことのむずかしさを改めて知るというか、刀を抜かない判断のむずかしさと言ったらない。ほんと「強さ」ってなんだろう。答えの出ない問いだけど、それを様々な角度から考え続けていく様が面白かった。

ノギとの会話が大変おしゃれでにやにやしちゃいますが、ヤナギとの交流もよいものがありました。強者は変人ばっかりだ。

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楊家将(上)(下) / 北方謙三

めちゃめちゃ面白かった! いやあ、楊家は強い。

10世紀末の中国で、楊家が仕える宋と、宋の領土を狙う遼の戦いを描くお話なんですが、帝への忠心をもって敵と戦う軍人として、これほどまでに頼りになる人はいなくて、主たる楊業のみならず、七人の息子たちそれぞれが得意分野を持つ強さがあるから、楊家がいれば大丈夫って思えたけど、軍人であることにこだわりすぎたのがいけないのか……強すぎるがゆえに警戒されて味方に足を引っ張られたりするのがやるせない。

それでも初めに仕えていた北漢に比べれば、宋の帝は名君だと思うけど、悲願ってものがあると視野が狭くなるんだなあ。

宋側では楊家が際立っていたけれど、遼側にも名将がそろってて、だからこそぶつかり合った時の戦いが見ごたえあった。いくら楊家が強くとも、宋の軍を率いているわけではないため、どうしたって動くに動けないことがあり、ゆえにいい勝負になったりするんだよなあ。

だからこそ、どんなピンチになっても楊業がいれば、という思ったわけだけど、次第に悪い予感がしていき、それが当たり始めると……胸が痛いったらない。マジつらい。

それでも最後まで軍人としての生きざまを見せる楊家が、本当に熱かった。いいもの読んだ。

楊家将〈上〉 (PHP文庫)

楊家将〈上〉 (PHP文庫)

 

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楊家将〈下〉 (PHP文庫)

楊家将〈下〉 (PHP文庫)

 

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ビブリア古書堂の事件手帖(7) / 三上延 

面白かったなあ。

今回は、シェイクスピアの古書にまつわるお話でしたが、なんとなくしか知らなかったけど、なんとなく知っている分、栞子さんの説明が興味深く思える。

いつも思うけど、このシリーズで紹介される本を読みたくなりますね。その時代ならではの製本方法とかも面白い。

それにしても、今回の取引相手の意地の悪さと言ったらないなあ。ま、それだけに最後こらしめられて、ふふふと思うわけですが。

栞子と大輔の、それぞれの家族に関するお話が出てきたのは、ふたりの関係がより近いものになったからなんでしょうね。踏み出すためのきっかけとなり、迷うことはあったけれど、うまいこと言ってよかった。

シリーズとしては終わりのようですが、後日談がでるようなので、楽しみにしてます。

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紅霞後宮物語 第五幕 / 雪村花菜

政治的な問題から、小玉が動けなくなっているのに、それが却って後宮内で彼女の勢力を伸ばすことになるというのが、大変面白い。

ただ、文林とのすれ違いが……いや、すれ違いというか、もともとあったことが表に出てきたということなのかな。お互い大切な存在で、言葉に出さずとも伝わるものがあるというのは、幻想だったのかしら。そうでないと思いたいけれど、ここで見えてしまった溝は大きい。

視野が狭くなっている文林が、このことに気付くけるのかは微妙なところだよなあ。

途中までが息の合った二人を思わせただけに、溝が見えた時がやるせなかった。ああ、つらい。

紅霞後宮物語 第五幕 (富士見L文庫)

紅霞後宮物語 第五幕 (富士見L文庫)

 

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殺し屋を殺せ / クリス・ホルム

殺し屋を殺す殺し屋ヘンドリクスと、彼を狙う殺し屋エンゲルマンの戦いを描くお話。

文章がこなれてないので、序盤は読みづらかったけど、ヘンドリクスの存在にエンゲルマンが近づき始める中盤からは一気読み。

正直、罪悪感から殺し屋を狙うようになったといいつつ、お金に目がくらむヘンドリクスの言動やら、エンゲルマンのよくわからぬ技能とか(どうやって忍び込んでるんだろう?)、設定にいろいろと引っかかるところはあるんだけど、怒涛のサスペンス展開のおかげで気にしてられなくなる。

ヘンドリクスの次の標的がわかるエンゲルマンが有利かと思ったら……ってところに、FBIが入り込んできて、対決もさることながら、FBIから逃れなければならないっていう展開は、次に何か起こるかハラハラというよりかはワクワクして読んでしまう。

隙はあるけれども、引き込まれるお話でした。

続編もあるらしいけど、どう続けるんだろ。

殺し屋を殺せ (ハヤカワ文庫NV)

殺し屋を殺せ (ハヤカワ文庫NV)

 

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