大丈夫、積んでる

さうざんどますたーになれなくて

大正箱娘 怪人カシオペイヤ / 紅玉いづき

万病に効く「箱薬」の謎を追うお話。

相変わらず、箱娘のうららにまつわるところは、謎なままですが、怪人については見えてきましたねぇ。……いやまさか思わせぶりなだけとか言わないよね、うん。

なにかと怪人の出現するところに遭遇する紺が危うくて、そりゃうららでなくてもハラハラしてしまいますが、好奇心だけではないまっすぐな視線が、彼女を救うというか、危険から逃れさせる力になってるんだろうなあ。

それにしても、燕也が恰好よく思えてきて困る。そんなわけないはずなんだけど、悪い男がふとした時に見せる弱さというか、素の部分とかにやられてしまう僕がいる。紺だからこそ引き出せたものなんだろうけど。

今回あまり箱娘の活躍がありませんでしたが、彼女に対する思惑が帝京に漂っているので、そろそろ対決したりするのかしら。紺がどう動くのかも気になる。

大正箱娘 怪人カシオペイヤ (講談社タイガ)
 

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ブラッド・スクーパ - The Blood Scooper / 森博嗣

やっぱり面白いなあ。

立ち寄った村で用心棒をするというシリーズ二作目ですが、これまでより深く人と関わるようになったことで、だいぶ変化が出てきました。不自由を感じるようになるあたり、世間を知ったとでもいうべきかしら。

でも、不自由を感じつつも、教わることも多く、ひとつひとつの経験を振り返り、咀嚼するように糧としていく、その思考が面白いし、はっとさせられますね。迷信とか宗教とかの考えは、そうだよなあ。

なるべく戦わないことを目標としていたけれど、さすがに戦わざるを得ない状況になってしまうわけですが、この殺陣のシーンがかっこいい。勢いと緊迫感があるのに、剣筋がスローモーションに感じる。紙一重の戦いを勝利してもなおわからないという剣の道は、いやはや大変なもんだ。

師匠の過去とかも気になるし、いつの間にやらやってくるノギさんも何者なのか気になる。

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ゲーマーズ!(7) ゲーマーズと口づけデッドエンド / 葵せきな

 恋人同士が修学旅行で距離を縮めようとしてたはずなのに、相変わらずすれ違っていくラブコメ
面白いのはリア充側にいる天道と上原がこじらせていくことですね。

普通、ああいう考えになるのは、自分に自信がないからこそだと思うんですが、どうしたって共通の話題では他の人たちに勝てない(って言い方もおかしいけど)から、及び腰になっちゃうんだろうなあ。
逆にぼっちで友達が少ない側である景太とかは、数が少ないからこそ大事に思ってるんだけど、オタクな話以外ではからきしだから、言葉や行動が足りなくなってしまうんだよなあ。
ほんのささいなすれ違いが、少しずつ積み重なっていくことで、想いを伝えようとした時に崩れていくラストは、これまで以上に衝撃が強い。

一体どうなることやら。

っていうか、振られたことでスッキリしたと思ってる千秋だけど、もし仮に天童と景太が……なんて思ってしまったら、今の気持ちはあっという間に崩れるだろうから、おお怖い。

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繰り巫女あやかし夜噺~お憑かれさんです、ごくろうさま~ / 日向夏

大学で非常勤講師をしている主人公だが、社務所に住み込んでいることから、生徒や周りの人たちから奇妙な相談を受けることがあり……という妖かし謎解き物語。

これは奇妙でゾワっとする。

背後に妖かしの存在が感じられる物語だけど、結局のところ何かをしているのは人なわけで、罪を犯す人の考えや行動こそが怖い。ファンタジーなところもありつつ、ホラー要素も強いミステリーってところかな。

語り手である主人公は、ぽわぽわしているので和むんだけど、世間知らずで、何やら暗い過去がありそうなので、周囲に妖かしの存在が感じられると危なっかしく感じて、変にドキドキしちゃう。

また主人公が住み込んでる社務所にいる人(?)や大家と呼ばれる神官さんは、人として描かれてるけど、本当にそうなのか?みたいなあやふやなところもあって、読んでて気持ちが不安定になる。

深いところまではいかないけれど、怪しい雰囲気がとても良いので、続編があったら読んでみたい。できれば、社務所内にいる人たちにフォーカスを当ててほしいなあ。

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ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているだろうか ファミリアクロニクル episodeリュー / 大森藤ノ

ダンまちは、外伝よりも本編を進めてくれないかなあ……なんて思いつつ、リューが主人公と聞いたら、手に取らざるを得ない。そして、期待通りの面白さだったけど、リューが主人公というよりかは、リューを中心とした周りの人たちのお話って感じでした

一番おもしろかったのは、娘をさらった輩が経営するカジノに乗り込むお話かな。いやでもこれ主人公は、むしろシルなんじゃ……と思わなくもなかったけど(悪女としか思えない)、そんな彼女を守りつつ、正義を行使するリューが格好良かった。

後半は、リュー(だけじゃなくルノアやクロエも)が「豊穣の女主人」で働くことになった経緯のお話で、なるほどこうやってみんなが仲間になっていったのかっていうのがわかったのは良かったけど、「豊穣の女主人」の主人であるミアの強烈なキャラクタがすごかった。まさかそんなファミリアに所属しているとは……。これ後にベルを巡って何か起きたりするのか、すっごい気になるところ。

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86―エイティシックス― / 安里アサト

帝国の無人兵器に対して、共和国が開発した兵器は、共和国が人と認めていない第86区の少年少女が犠牲となる「有人」の無人機だった……死地へ向かう第86区(エイティシックス)の少年少女と、安全な後方で彼らを指揮する少女レーナの交流と戦いを描く物語。

おもしろかった! 

いわゆる差別する側とされる側のお話ということで、暗く重いお話になるのかと思いきや、思ったほどのことにならないのは、86の少年少女が達観していたことと(それ自体が重いんだけど)、レーナのまっすぐさがあったからでしょう。

いや、86の事実を知り差別を許せないとする少女の思いに、実は無意識のうちにしていた差別があるとか、そういうところはきついんだけど、ショックを受けながらも決してあきらめないレーナの頑張りが、指揮する隊のメンバーのみならず、読んでるこっちにも伝わるものがあるから、重苦しくならないんだろうなあ。

自分にできることを模索してやり遂げる姿に、熱いものを感じる。

すれ違う価値観と事実を直面して傷つきながらも、決して溝を開けることのなかったレーナの思いが、少しずつ86な人たちの心を引き寄せていき、夜、隊の皆が集まってちょっとした話をする、そんなつかの間の平和な時を過ごせるようになったところが素敵でした。

実は希望すらなかったわけですけど、それでも最後まであがき続けたレーナの思いが、ひとつの奇跡を生み出したというラストは、甘いとも思うけど、よかったです。

これぜひとも続編というか、鮮血の女王と呼ばれる時代のお話を読んでみたい。

86―エイティシックス― (電撃文庫)

86―エイティシックス― (電撃文庫)

 

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本好きの下剋上~司書になるためには手段を選んでいられません~ 第三部「領主の養女III」/ 香月美夜

冬のお披露目会とか貴族の子供たちとの交流をしつつ、印刷機の改良をするお話。

精力的に動いているけれど、個人的には、子供たちとの交流がよかった。楽しみながら学べる場が、とてもいい雰囲気。

むろん本を作るという自分のためではあるけれど、マインの興味に引きずられて、動く子供たちが成長したらどうなるのか楽しみ。 

ただ、ここまできても、やっぱりこの世界の人たちとの価値観の違いがあることを見せつけられてしまうのが重い。

ハッセの処分については、こればっかりは、どうしても慣れるのは難しい気がする。そこは周りの人が支えてあげてほしいものだけど、立場があるだけになあ……神官長もあまり厳しくしないでね。

って、そういえば、神官長ってすごい人なんだなあと随所で感じさせられるお話だった。だって、何かやろうとすると必ずと言っていいほど、先人として名が出てくるんですもん。そりゃ大いに頼られるわけで、これまで大変だったんだろうなと思うばかり。

今も今で、マインのしでかすことに頭を痛めているけれど、同時にマインからこれまでにない刺激を受けて、昔と変わってきている様子が見えることに、ニヤッとする。これはフランも同じか。

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