大丈夫、積んでる

さうざんどますたーになれなくて

佐伯さんと、ひとつ屋根の下 I'll have Sherbet!(1) / 九曜

Web小説の時に読んでから、大好きな作家さんの作品です。

高校二年の進学を機に一人暮らしをすべく引っ越したら、同じく一人暮らしをしようとしていた女子高生とバッティングして、ルームシェアをすることになる、というお話。

何が楽しいって、二人の関係ですよ。クールであろうとする男の子と、クールな一面を崩したい女の子のやり取りに、にやにやが止まらない。ルームシェアのことは周囲に隠してるのに、学校で会ったら、つい……みたいなシーンが大変楽しい。

からかい上手というには、ちょっと無邪気すぎるんだけど、それがまた予想もつかない行動(いや、予想できちゃうんだけど)をしてくれるので、どうしたって動揺しちゃう。でも、壁は決して崩そうとしない男の子の頑張りがいいです。

基本的には男の子パートで話が進むので、なんとかギリギリのところでかわしてるように思えるんだけど、たまに見える女の子パートで、彼女がギリギリのところで踏み込んでないのが見えて、年下といえど、やっぱり女の子にはかなわないんだなあと思う次第です。

周囲から見たら、大変仲良く見えるのに、それでも付き合ってませんよ、顔見知り程度ですよという振りをし続ける距離感が大変良いです。

この後も楽しみだなあ。

佐伯さんと、ひとつ屋根の下 I'll have Sherbet! 1 (ファミ通文庫)

佐伯さんと、ひとつ屋根の下 I'll have Sherbet! 1 (ファミ通文庫)

 

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あしたはれたら死のう / 太田紫織

自分は自殺未遂をしたのだという。だが、数年分の記憶がないため、なぜ自殺しようとしたのかわからない女子高生が、SNSに残された日記「あしたはれたら死のう」から、かつての自分を探す物語。

前半の雰囲気がとても好き。

記憶を失ったことで、以前とは異なる性格になり、そのことを回りが受け入れ難くなるという人間関係のぎくしゃくさとか、他人のよそよそしさに気づきながらも、かまわず進んでいくところとか、いい感じでした。

自分は自分と思いながらも、やはりかつてどう思っていたのかを気にし始めたのは、同級生の男の子も同じタイミングで亡くなったってことなんだろうなあ。いわば心中なわけで、そりゃ理由が知りたくなるとは思います。

惜しむらくは、見えてくる事実が、うーん?って感じるところかなあ。もっと家族と向かうような話になるのかと思ったらそうでもなかったし、前半と後半がしっくりかみ合わない感じを受けたのが残念。

あしたはれたら死のう (文春文庫)

あしたはれたら死のう (文春文庫)

 

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アクセル・ワールド(20)(21) / 川原礫

ついに始まる領土戦。

いやあ、すごい盛り上がりだった。

準備万端で仕掛けたけれど、ってところから、あっという間に追い詰められていくから、心意もさることながら、手の内がわからないことのアドバンテージって大きいよなあ。

あっちにも事情はあるんだろうけれど、説明してくれないから、そりゃ戦うしかなくなるでしょうと思わんばかり。

にしても、そこいらで熱い戦いがあったなあ。メタちゃんとトリリードの加入は、ほんと大きかった。ギリギリのところで切り抜けられたのは、間違いなくこのふたりのおかげ。

ひとまずの決着はついたけれど、かえって謎が増えた気がするので、早いところ解明してもらいたいです。

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アクセル・ワールド21 -雪の妖精- (電撃文庫)

アクセル・ワールド21 -雪の妖精- (電撃文庫)

 

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京都寺町三条のホームズ / 望月麻衣

ホームズとあだ名される骨董品店「蔵」の息子・大学生の家頭清貴と、「蔵」でバイトすることになった女子高生の真城葵が、京の町で遭遇する謎を解くお話。

京都を舞台にされると、その風景を見に行きたくなります。実際にこういう場所があるんだろうなあ。歩いてみたいと思うばかり。

骨董の話とか、なかなかにいい雰囲気でしたが、次第にホームズさんがその力を発揮していくと、謎解きよりも恋愛にシフトしていった気がしました。

鑑定できるわ観察眼鋭くてホームズだわ気を使える優しさがあるわで、かっこよすぎてどうしてくれよう。

はじめは、バイトするきっかけとなった人間関係の問題から、そんなに意識してなかった葵が次第に……というのは仕方ないと思います。傷ついた彼女を守るがごとく登場した時には、惚れるしかないと思った。

個人的にはもうちょっとミステリ色が強いとうれしいんだけど、これはどっちかといったら恋愛ものなんだろうな。

京都寺町三条のホームズ (双葉文庫)

京都寺町三条のホームズ (双葉文庫)

 

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信玄忍法帖 / 山田風太郎

信玄の死を隠したい武田と、信玄の死を確認したい徳川が、それぞれが間諜として忍者を放つお話。

早々に退場した信玄だけど、その存在感といったらないな。

恐らくは死んでるであろうと思いながらも、生きている可能性がわずかでもあるだけで動けなくなる家康の必死さが、そう感じさせるのかもしれない。

信玄には、6名の影武者がいたということで、徳川の忍者が暴く度に、仕留めるも影武者も失うという戦いが続き、それがまた歴史の流れとうまく絡み合うんだよなあ。

歴史の裏側でこんなにも忍者が暗躍していたのかと、思わず納得してしまうものがある(むろん創作なんだけど)。

武田側もやられてばかりでなく、徳川に仕返しをして、これまたグロい忍法合戦なわけですが、歴史の流れからしたら、武田は徳川に敗れるわけだから……そうなんだよなあ。

勝頼が信玄の遺言どおり、死を三年隠しきれたらどうなったんだろうなんて考えてしまいました。

信玄忍法帖 (角川文庫)

信玄忍法帖 (角川文庫)

 

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(仮)花嫁のやんごとなき事情 未来へ続く協奏曲 / 夕鷺 かのう

本編終了後の後日談短編集。

落ち着いたお話が多かったですが、初っ端がコミカルすぎてヤバかった。

ほんとうにほんとうの初夜を迎えることになり、でも初夜って何をすればいいんだろう?という花嫁さんが、周囲の人にどうすればいいのかを聞くというね。

うっすらはわかっているというのが、教える側としたら面倒というか、ごまかすことが難しくなり、でもどんなに踏み込んでも、おしべとめしべ的というか、凹凸とかそんな感じでしか言えず、結局花嫁さんに理解されないという展開に笑いが止まらない。

ま、旦那さんからしたら、恥ずかしくも、そんな妻が愛おしく感じちゃうわけですが。

全体的にこの短編集では、デレッデレな夫の姿を見せてくれたクロウだったなあ。妻にもそうだけど、子供にも。いや、子煩悩にはなると思ってたけど、なるほどこうなりますかとニヤリとさせられる。過去のことから、家族に対して、思うところがあっただけに、実際に大切な人が傍にいると……という変化がよかったです。

兄の恋の行方には、似た者同士の譲り合いにいらいらしつつも素敵だなと想ったり、ちょっと切ない兄弟のお話もあったけれど、未来への幸せを感じられるお話ばかりで、とても良い最終巻でした。

(仮)花嫁のやんごとなき事情 ~未来へ続く協奏曲~ (ビーズログ文庫)

(仮)花嫁のやんごとなき事情 ~未来へ続く協奏曲~ (ビーズログ文庫)

 

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おこぼれ姫と円卓の騎士(16) 反撃の号令 / 石田リンネ

クーデターから間一髪逃れたレティが、レティに仕えるものたちが、副題通り、反撃開始するお話。

いやあ、すごかった。制限された状態の中、わずかな情報をもとに、仲間を信頼して動くレティたちの行動に息をつくのが精一杯。

機会を作るために、コツコツと積み上げていっても、先を読まれて崩されていくけれど、ほんの僅かな綻びと、レティたちを信じる人達の力によって、綻びを広げていく手腕が素晴らしい。

むろん運もあるけれど、ようやく土台が出来上がって、一息つけました。ってところで、気づいたらエピローグ。一巻まるまる使ったのか。そんな長くないのに、読み終わったら、すっごい疲れたな。

どうやら次で決着がつくそうです。最終巻か。表紙の二人が、表紙のような関係を、隠すことなく作り上げられる未来でありますように。

おこぼれ姫と円卓の騎士 反撃の号令 (ビーズログ文庫)

おこぼれ姫と円卓の騎士 反撃の号令 (ビーズログ文庫)

 

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「貴方、わたくしのように面倒な身分と面倒な性格を持つ女性を好きになるなんて、趣味が随分と悪いわね」

「そうか? 寧ろ、面白みのないぐらい普通の趣味……というか、良い趣味をしているつもりだ。こんなに近くに、綺麗で、お人好しで、可愛い人がいたら、好きになって当たり前だろう?」