大丈夫、積んでる

さうざんどますたーになれなくて

アクセル・ワールド(17)-(19) / 川原礫

 加速研究会の黒幕を暴くために、ネガ・ネビュラスが動くお話。

他の勢力との調整やアクセルワールド世界のさらに深い話などがあり、面白くはあれどやや盛り上がりに欠けるかなってところで、19巻ですよ。盛り上がってきました。

加速研究会へ仕掛ける直前ですが、これに期待が膨らみます。なんせ、強敵と書いて友と読むような人が、共に戦う仲間になるんですからね! これに熱さを感じなかったら嘘になる。気づいたら、ネガ・ネビュラスがずいぶん大きくなってるなあ。

かつての仲間が持ってきた話も大きかったけど、歯切れが悪いというか、肝心のところは話してくれないので、ちょっとモヤモヤする。そのあたりは、加速研究会との戦いが進むにつれて明らかになるのかな。

 

 

 

 

ディエゴの巨神 / 和ヶ原聡司

禁忌の陰陽術を研究していた主人公が、陰陽術の使い手や教会から逃れるために、新大陸遠征軍の船に乗り込んだが、新大陸で待ち受けていたのは、巨神と水の檻にとらわれた少女だった……というお話。

これはいいボーイ・ミーツ・ガールでした。

新大陸発見ものとしてのワクワクさはなかったんですが、渡ってきたものと先住民との軋轢と、興味の対象である陰陽術のためなら、そんな軋轢をものともしない主人公のまっすぐさがいい。まあそうなってしかるべき状態だったから、先住民との出会いは、ある意味救いだったもんなあ。

文化の違いもあり、衝突してしまうふたつの勢力は、主人公からすると侵略する側が悪に見えるけれど、むろん言い分はあるわけで、単純に悪と決めづらいものがある。

とはいえ、やり方が汚く見えるのは、単巻ものの短さゆえかな。これたぶん全三巻ぐらいで書かれるお話だと思うんですよ。読んでる間は楽しかったけど、あれってツッコミどころが結構あったので、両方の事情をもっと見せてくれたら、もっと面白くなったんじゃないかなあ。  

ディエゴの巨神 (電撃文庫)

ディエゴの巨神 (電撃文庫)

 

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七姫物語(1)-(6) / 高野和

年に一回は読んでる大好きなシリーズです。

孤児の少女が、大人二人に担ぎ上げられて、偽りの姫を演じながら世界を見るお話……と書くと悪い大人にだまされた少女のお話のように思えるけど、実際には悪い大人というよりかは成長した悪ガキみたいな感じ。

自分たちが楽しいと、面白いと思えることのために動きつつ、お互いをちゃんと尊重してるので、知らないところでいろいろ動いているのを知っても、しょうがいなあって思える距離感が素敵。主従というよりかは家族に近いかな。いや、やっぱり仲間というのがしっくりくる。

少女の視点で語られる物語は、世界を見たいという好奇心と物事に対する素直さによって、とても透明感のある雰囲気で、それがまた心地いい。

各都市で担ぎ上げられている姫君たちが、それぞれ正当性を主張するという世の中は、いうなれば戦国時代なんだけれど、血生臭さがないのは、姫君たちの視点で語られるからだと思う。

七番目の姫君は、一番年下で、世界を知らないから、てくてくと周りを見ては取り込んで、ゆっくりゆっくり咀嚼していく。そんな彼女の姿が微笑ましく、同時にその素直さが憧れが、どこまで世界を広げていくのか危うさを感じる時もある。これは、七姫を担ぎ上げている大人二人も別の意味でそうだけど。

平和の象徴である姫君を担ぎ上げるために、それぞれの都市が本音を隠して建前で動くために、大都市ほど軽々しく動けない状況が、七姫側を勢いづけていくという勢力図も、面白さの一環でした。

最後まで七姫が七姫でいてくれたことがうれしかった。

電子書籍版の最終巻には、おまけとして七姫のそばについていた衣装役さんのお話がありました。この人、登場人物の中でもトップクラスに大好きだったので、よかったなあ。もしかしたら、次は七姫が同じような……なんて想像しちゃいましたね。

七姫物語 (電撃文庫)

七姫物語 (電撃文庫)

 

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七姫物語(2) 世界のかたち (電撃文庫)

七姫物語(2) 世界のかたち (電撃文庫)

 

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七姫物語〈第3章〉姫影交差 (電撃文庫)

七姫物語〈第3章〉姫影交差 (電撃文庫)

 

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七姫物語〈第4章〉夏草話 (電撃文庫)

七姫物語〈第4章〉夏草話 (電撃文庫)

 

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七姫物語〈第5章〉東和の模様 (電撃文庫)

七姫物語〈第5章〉東和の模様 (電撃文庫)

 

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七姫物語〈第6章〉ひとつの理想 (電撃文庫)

七姫物語〈第6章〉ひとつの理想 (電撃文庫)

 

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体育館の殺人 / 青崎有吾

高校の旧体育館で起きた密室殺人事件。容疑を晴らすために学年一の天才と言われている変人、学校に住み着いている裏染天馬に謎解きを頼むというお話。鮎川哲也賞

面白い。ちょっと強引に感じるところもあるけれど、あるひとつの事実をもとに、ばーーっと拡がっていく推理展開が良いです。

ただ探偵役の生徒は、ちょっとクセが強くて、あまり好ましくはなかったけど。オタクであることはともかく、金に汚すぎませんかね。おかげで周りの生徒達が好ましく思えたのは余談。

読者への挑戦があったので、少し考えたけど、そこで解けるような頭はしてないので残念でした。

でもここまで丁寧に解説されると、あああれが伏線だったのかとつながっていく感覚が気持ちいい。

続編も読んでみよう。

体育館の殺人

体育館の殺人

 

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ヒーローは眠らない / 伊丹央

映画畑の人が、子供向け特撮ヒーロードラマのプロデューサーに任命されて、というお話。つまりは東映の人のお話。

面白い。むろん、子供向け番組だからといって簡単なものだとは思ってなかったけれど、いやあ大変だ。やはり制作には多くの時間と労力を要するんだなあ。

特撮ってあまり知らないけれど、その裏側が見えるお仕事小説ってのは、やはり読ませられてしまう。

惜しむらくは、制作に対して邪魔をする人の存在がいることでしょうか。社内政治的なものならまだしも、ただの逆恨みで、正直その話をするよりかは、制作話に注視して、一つの番組を作り上げるお話にしてくれたほうがもっと楽しめたんじゃないかと思う。

できれば、本編とエピローグの間のお話が読んでみたいな。

ヒーローは眠らない (富士見L文庫)

ヒーローは眠らない (富士見L文庫)

 

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蜘蛛ですが、なにか?(5) / 馬場翁

同じクラスの転生者は、吸血鬼で貴族の子供だったというところから始まるお話。

他人に無関心ではあるけれど、目の前で死なれちゃ気分が悪いってところから、気づけば人助けしてるあたりに彼女の人の好さを感じる。ずっとひとりで生きてきたから、その反動があるんだろうなあ。むろんそれだけじゃないってのも見えたけど。

複数の視点で物語が語られるため、一番好きな蜘蛛子の話があまりなかったのが残念ですが、勇者視点があったおかげで、ズレの大きさに気付けました。別視点からみると、こうも認識に差ができてしまうのか。あんま対話しようとしないあたりにも問題あると思うけど。

意外な勢力が手を組むことになったり、幕間の語り手が実は……なところに驚いたりしましたが、これでだいたいの世界観は出てきたのかな。それともまだ明かされてないことがあるのかしら。 

蜘蛛ですが、なにか? 5 (カドカワBOOKS)

蜘蛛ですが、なにか? 5 (カドカワBOOKS)

 

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月とライカと吸血姫 / 牧野圭祐

人類が宇宙を目指す時代。他国よりも先に宇宙を目指す共和国は、実験飛行に人間の身代わりとして、吸血鬼を使うことにした、というお話。

これはとても素敵なボーイミーツガールだ。やっぱ宇宙へのあこがれを描くお話は好きだなあ。

自身の事情から差別を受けながらも宇宙を目指す吸血鬼の少女と、宇宙飛行士候補生として落第しそうになりながら、それでも宇宙をあきらめきれない青年の関係がとてもいい。

はじめは壁があったものの、ともに訓練を過ごすうちに……というのは、やっぱそうだよなあ。死と隣り合わせの飛行を目の当たりにしながら乗り越えることができたのは、お互い支えあったからでしょう。

築き上げた信頼が伝わるジャズバーの話に、思わずじんわり。

月とライカと吸血姫 (ガガガ文庫)

月とライカと吸血姫 (ガガガ文庫)

 

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