大丈夫、積んでる

さうざんどますたーになれなくて

☆☆☆☆

屍人荘の殺人 / 今村 昌弘

ミステリ愛好会の二人と探偵の実績を持つ女子大生が、映画研究部の合宿に参加したら、そこで連続殺人が……というお話。第27回鮎川哲也賞受賞作。 これは面白かった。 ちょっと郊外のペンションとか、なかなかに事件が起きそうなシチュエーションで、そりゃミ…

宝石商リチャード氏の謎鑑定 導きのラピスラズリ / 辻村七子

姿を消してしまったリチャードを追いかけるお話。 正義は情に厚いかもしれないけれど、べたっとした感じではないと思っていたので、リチャードのことを考え続けていく姿には違和感だらけ。こんなBLだったっけ?みたいな。 もしかしてこれは恋なのかと自問す…

紺碧の果てを見よ / 須賀しのぶ

面白かったなー。 関東大震災から戦後までのお話だけど、決して劇場的なものではなく、海と艦にあこがれた少年の成長を淡々と(というと語弊があるけど)描き、そこでの出会いや別れ、妻や妹といった家族への思いなどに、胸が熱くなる。 特になあ、学校時代…

マインド・クァンチャ / 森博嗣

主人公が記憶喪失になったというところから始まったので、どうなるのかと思ったけど、やはり思考は止まらずで面白い。これだけ考えているのに、剣を振るときは無になるというのが強さなんだろうなあ。 ただ、都を目指すということが生み出した結果は……主人公…

ホーンテッド・キャンパス 白い椿と落ちにけり / 櫛木理宇

初デートが成功したことで、かえってギクシャクしてしまう二人を見守りつつ、オカ研に寄せられる依頼を解決していくお話。 これ、読者は森司の心情が見えるからいいけど、こよみからしたら、いきなり挙動不審になるんだから、デートの時に何かしちゃったのか…

失踪者(上)(下) / シャルロッテ・リンク

元ジャーナリストが、5年前に失踪した幼馴染についての記事を書くために、過去を振り返るお話。 事件を追う元ジャーナリストの視点だけでなく、いくつかの視点が入れ替わり立ち代わりで語られるので、初めはちょっとたるいんだけど、関連が見えてくると止ま…

ひとくいマンイーター / 大澤めぐみ

友人を殺された女子高生が、復讐するため魔法少女になったお話。 あー、これいいな。すごくいい。 はじめは、自称・魔法少女が何をやっているのかよくわからなかったんだけど、少しずつ見えてくるにつれて、彼女の内面が見えてくると……きゅんとなる。ああこ…

WORLD END ECONOMiCA(1) / 支倉凍砂

月生まれのハルは、上に上がる資金を手にするため、株に手を出したが、なかなか思うように稼げない日々が続いたとき、コミュ障だが数学の天才少女ハガナと出会って……というお話。 これはすっごい面白い。かなり分厚いけど、それでもまだ序盤って感じなんだよ…

ビッグデータ・コネクト / 藤井太洋

「なんで助けを求めなかった」「多分――」 「要らない、と言われたくないから、だろうな」 エンジニア誘拐事件の調査に、かつてサイバー犯罪で冤罪となったハッカーに協力を求めるお話。 めちゃめちゃ面白かった。SNSやGPS・監視カメラ等、日々利用しているも…

いでおろーぐ!(5) / 椎田十三

反恋愛運動革命家たちによる戦いは、ついに文化祭で生徒会と対決することになりましたが、いったいどこが反恋愛なんでしょうねぇ! 甘酸っぱいやり取りばかりで、にやにやしちゃう。そりゃ周囲の人たちは、ふたりが付き合ってると思うわけですよ。 二人以外…

フォグ・ハイダ  / 森博嗣

今回は、これまでで最強の剣士と遭遇するお話。 あー、だいぶ変わってきたなあ。情といったらなんですが、人と関わることによって、自ら動くようになったところに変化を感じます。これを成長と呼ぶのか、剣士としては弱くなったというべきか。 というか、や…

悪女は自殺しない / ネレ・ノイハウス

こういう展開でじれったさを感じるとは面白い。 自殺に偽装された殺人事件を追うお話なんだけど、周りには彼女に恨みを持つ人ばかりで、でもそれで殺すほどかといったら、そこまででもなく、それぞれに微妙にアリバイがあって決定打がない。 さらには調べて…

剣と炎のディアスフェルド(2) / 佐藤ケイ 

優秀な兄を差し置いて王となったレオームが、ディアスフェルドを統一するまでを描いていますが、これが面白い。 負けない戦いをするといえばかっこいいけれど、チャラくて逃げ足が早くて、どうしたって蔑まされるのに、国を守るために強い芯を持つ姿が、いつ…

おそれミミズク あるいは彼岸の渡し綱 / オキシタケヒコ

これは良いボーイ・ミーツ・ガールなホラーだった。 山中の屋敷に住む下半身不随の女の子と、そんな少女にひかれる少年のお話なんだけど、怖がりなくせに彼女が求めるからと怖い話を収集しては週に一度の逢瀬で披露していく様は、不器用さにほほえましさを感…

スカル・ブレーカ / 森博嗣

相変わらず面白い。 これまでうっすらと見えていたゼンの素性が、唐突に明かされてびっくり。内容じゃなくて、こんなあっさりと明かされたことに対してですが。情というものに重きを置いていない彼だけど、少しずつ変わってきてて、特に師がなくなったことに…

ビブリア古書堂の事件手帖(7) / 三上延 

面白かったなあ。 今回は、シェイクスピアの古書にまつわるお話でしたが、なんとなくしか知らなかったけど、なんとなく知っている分、栞子さんの説明が興味深く思える。 いつも思うけど、このシリーズで紹介される本を読みたくなりますね。その時代ならでは…

ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているだろうか ファミリアクロニクル episodeリュー / 大森藤ノ

ダンまちは、外伝よりも本編を進めてくれないかなあ……なんて思いつつ、リューが主人公と聞いたら、手に取らざるを得ない。そして、期待通りの面白さだったけど、リューが主人公というよりかは、リューを中心とした周りの人たちのお話って感じでした 一番おも…

86―エイティシックス― / 安里アサト

帝国の無人兵器に対して、共和国が開発した兵器は、共和国が人と認めていない第86区の少年少女が犠牲となる「有人」の無人機だった……死地へ向かう第86区(エイティシックス)の少年少女と、安全な後方で彼らを指揮する少女レーナの交流と戦いを描く物語。 お…

ヴォイド・シェイパ / 森博嗣

めちゃめちゃ面白かった。 師の教えに従い山を下りた若き侍が、強さを求めて旅をする物語なんだけど、これまでずっと師匠と二人っきりで過ごしていたから、人と出会うたびに、ちょっとずつ変化していく。 たとえそれが今にも倒れそうな老婆であったとしても…

Gene Mapper -full build- / 藤井太洋

遺伝子設計した稲に重大な問題が見つかったという報告を受けて、遺伝子デザイナーと企業のエージェントが原因究明にあたるお話。 面白い。これは映像で見てみたいなあ。拡張現実がフルに使用されてて、なんとなくはわかるけれど、実際にどう見えるのか見てみ…

やがて恋するヴィヴィ・レイン(2) / 犬村小六

ああ、もう、「今」この時だけだったら幸せなのになあ。 ヴィヴィ・レインを探す旅。ただそれだったはずなのに、気づけば大きな歴史の流れの中に巻き込まれてる。 なまじ弱い人を助けられるだけの力があることが、のちに不幸を生み出しそうなんだよなあ。な…

リボルバー・リリー / 長浦京

関東大震災後、陸軍に家族を殺されて追わていれる少年が、かつて美しき諜報員として名をはせた「リボルバー・リリー」に助けを求め、たった二人で、陸軍の手から逃れようとするお話です。 VS帝国陸軍1000人 たった二人の六日間戦争 って文句はすごいなあ。で…

佐伯さんと、ひとつ屋根の下 I'll have Sherbet!(1) / 九曜

Web小説の時に読んでから、大好きな作家さんの作品です。 高校二年の進学を機に一人暮らしをすべく引っ越したら、同じく一人暮らしをしようとしていた女子高生とバッティングして、ルームシェアをすることになる、というお話。 何が楽しいって、二人の関係で…

信玄忍法帖 / 山田風太郎

信玄の死を隠したい武田と、信玄の死を確認したい徳川が、それぞれが間諜として忍者を放つお話。 早々に退場した信玄だけど、その存在感といったらないな。 恐らくは死んでるであろうと思いながらも、生きている可能性がわずかでもあるだけで動けなくなる家…

おかえりの神様 / 鈴森丹子

葉月さんの感想をみて手に取りました。 ついてないときに思わずしてしまう神頼み。そんな時に本当に神様が現れたら……恋に悩む男女が繰り広げる連作短編集。 これはいいなあ。ほんのり温かいお話だ。 おじいさんがアレする昔話で出てくる山の神や、どんぶらこ…

横浜駅SF / 柞刈湯葉

いつも工事ばかりしてる横浜駅というところから着想を得て、もしも改築・増築を繰り返した横浜駅が日本を覆い、人類を支配してる世界で、スイカを持たずエキナカに入れない青年が、18切符を手に入れてエキナカに入っていくというお話。 この設定だけで面白い…

蜘蛛ですが、なにか?(5) / 馬場翁

同じクラスの転生者は、吸血鬼で貴族の子供だったというところから始まるお話。 他人に無関心ではあるけれど、目の前で死なれちゃ気分が悪いってところから、気づけば人助けしてるあたりに彼女の人の好さを感じる。ずっとひとりで生きてきたから、その反動が…

月とライカと吸血姫 / 牧野圭祐

人類が宇宙を目指す時代。他国よりも先に宇宙を目指す共和国は、実験飛行に人間の身代わりとして、吸血鬼を使うことにした、というお話。 これはとても素敵なボーイミーツガールだ。やっぱ宇宙へのあこがれを描くお話は好きだなあ。 自身の事情から差別を受…

聖女の毒杯 その可能性はすでに考えた / 井上真偽

奇跡の存在を証明したい探偵が事件に挑むミステリーの第二弾は、結婚式の三々九度的なもので、回し飲みした八人のうち、三人が毒殺されたという事件に挑むお話。 探偵役がなかなか登場せず、その弟子ががんばってたんだけど詰めが甘いせいで、裏社会的な人が…

明治断頭台 山田風太郎ベストコレクション / 山田風太郎

明治時代、役人の不正をあばく大巡察の二人が、奇妙な謎に遭遇する連作ミステリー。 これは面白かった。 やや作りこみの甘い謎だけど、時代を意識するならば、こんな感じなのかなあなんて読んでたのが甘かった(だって解決編が読みづらいんだもん)。最後に…