大丈夫、積んでる

さうざんどますたーになれなくて

いでおろーぐ!(5) / 椎田十三

反恋愛運動革命家たちによる戦いは、ついに文化祭で生徒会と対決することになりましたが、いったいどこが反恋愛なんでしょうねぇ! 甘酸っぱいやり取りばかりで、にやにやしちゃう。そりゃ周囲の人たちは、ふたりが付き合ってると思うわけですよ。

二人以外の部員たちも、反恋愛のためにあれこれ文化祭準備してたけど、結果としてこれめちゃめちゃ青春だったから、面白いったらない。

アジト陥落でショックを受けた領家を立ち直らせるために高砂が放った言葉は、もはや告白以外の何物でもないけど、あれをああいう形で納得?しちゃうあたりが残念な人たちというところでしょうか。

それにしてもラストは驚いたなあ。生徒会との対決が、ああいう形で決着するとは思いもしなかった。でもこれはうれしい誤算です。

とてもきれいに終わっていたので、最終巻かなと思ったけど、そうではないのかな。

いでおろーぐ!5 (電撃文庫)

いでおろーぐ!5 (電撃文庫)

 

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フォグ・ハイダ  / 森博嗣

今回は、これまでで最強の剣士と遭遇するお話。

あー、だいぶ変わってきたなあ。情といったらなんですが、人と関わることによって、自ら動くようになったところに変化を感じます。これを成長と呼ぶのか、剣士としては弱くなったというべきか。

というか、やっぱり強さって何なんだろうという話でもあるんだよなあ。凄腕の剣士には、守るべき存在がいた、そのことは彼にとって足かせになっているようにも見えるし、でも守るべきものがいるからこその強さでもあるようだし。

これまでで一番戦うシーンが多かったけど、勝つため、守るため、生き残るためなどなど、それぞれの強さというのは異なるものなんだと思いました。

そういえば、今回はどの人物にも女性が絡んでいましたが、ゼンのノギに対する思いというのは、意識するようになってるけど、どうなのかなあ。彼女との会話は、いつも洒落てて素敵。

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侍女ですが恋されなければ窮地です(2) / 倉下青

公姫に新たな婚姻話をご破算にするため、再度身代わりを務めることになった侍女と、そんな彼女の恋人役を任された傭兵隊長のお話。

おっかしいなあ。ヒロインの恋人役といったら、ヒーローなはずなのに、傭兵隊長が一番の悪役に見える。またそれがめちゃめちゃハマり役なので、思わずニヤついてしまうし、そんな彼への思いがあるにも関わらず、必死に否定している侍女のあれこれには、ニヤニヤが止まらない。

侍女は、公妃に対しては強いんだけど、こと恋愛方面については、傭兵隊長が公妃の協力者になるから、このふたりの悪い笑顔が素敵でした。

新たな婚姻話を持ち込んできた他国の王子は、いわゆるさやあてになってしまうわけですが、弱そうなのになかなかへこたれない人なので、これからもなんとかなるんじゃないかな(投げやり)

これさらに続けるとしたら、傭兵隊長の過去話に絡めたりするのかな。今回ちょこっとだけ出てきて気になったので、ぜひとも読んでみたい。

侍女ですが恋されなければ窮地です2 (一迅社文庫アイリス)

侍女ですが恋されなければ窮地です2 (一迅社文庫アイリス)

 

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悪女は自殺しない / ネレ・ノイハウス

こういう展開でじれったさを感じるとは面白い。

自殺に偽装された殺人事件を追うお話なんだけど、周りには彼女に恨みを持つ人ばかりで、でもそれで殺すほどかといったら、そこまででもなく、それぞれに微妙にアリバイがあって決定打がない。

さらには調べていくうちに、実は別の事件が絡んできて……というのはよくある展開なんだけど、別の事件の道筋は見えてくるのに、肝心の殺人事件は進んでないというのが、もどかしい。

ま、別の事件の方も面白いので、あ、そういえば、殺人事件が進んでないねって、少し経ってから気付かされる感じではあるんだけど。

もうちょっとスッキリさせてくれたら、もっと面白くなったんじゃないかな。いや、十分面白いんですけどね。

ただ、個人的には、主人公のひとりの刑事が、できる人って感じでかかれているのに、何かと衝動的に動くところがあるので、そこがちょっとあれ?っておもった。

コンビ組んでる女刑事のがクールでカッコよかったので、彼女の活躍するお話を読んでみたい。

悪女は自殺しない (創元推理文庫)

悪女は自殺しない (創元推理文庫)

 

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剣と炎のディアスフェルド(2) / 佐藤ケイ 

優秀な兄を差し置いて王となったレオームが、ディアスフェルドを統一するまでを描いていますが、これが面白い。

負けない戦いをするといえばかっこいいけれど、チャラくて逃げ足が早くて、どうしたって蔑まされるのに、国を守るために強い芯を持つ姿が、いつしか仲間を増やしていく展開に熱くなる。いやもうかっこいい人がいっぱい出てくるんだ。いつの間にやらフィーリもいいヒロインになってきたしなあ。

惜しむらくは展開が早かったことかな。サクサク進んでしまったのは読みやすかったけれど、もうちょっと深いところまで行ってほしかったと思わなくもない。

それにしても、優秀な兄のほうが王に向いていると思っていたのに、レオームに王としての資質が見えてきてるわけで、これは兄の方はどういう思いになっているんだろう。今回全く出てこなかったので、次は兄方面を描くのかな。ドキドキだ。

剣と炎のディアスフェルドII (電撃文庫)

剣と炎のディアスフェルドII (電撃文庫)

 

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おそれミミズク あるいは彼岸の渡し綱 / オキシタケヒコ

これは良いボーイ・ミーツ・ガールなホラーだった。

山中の屋敷に住む下半身不随の女の子と、そんな少女にひかれる少年のお話なんだけど、怖がりなくせに彼女が求めるからと怖い話を収集しては週に一度の逢瀬で披露していく様は、不器用さにほほえましさを感じつつ、次第に怖い話に恐怖を覚える少年の気持ちにゾワゾワしてくる。

ほんの些細な不安なんだけど、それを存分に膨らませていくから、ちょっと想像過多になると、こっちまで不安になる。

そんな怪異に対して、実は合理的に説明ができるんだよ、みたいなお話になったかと思ったら、さらに急展開していって、ホラーからミステリーに、そしてSF?みたいな怒涛の展開に、いったいどうなっちゃうんだろうと思ったけど、最後はいい感じに青春してて、とてもよい読後感でした。

これ続編出してほしいなあ。

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血涙 新楊家将 (上)(下) / 北方謙三

先日読んだ楊家将の続編。なんでこんなタイトルなんだろうと思ってたけど、そりゃこうなるわ。この戦いには、血の涙を流さずにいられない。何がって、楊家の者同士で戦うことになるんですから。

遼との戦いで楊業を失い、生き残った六郎と七郎が壊滅状態の楊家を復興すべく動いた先に待っているのが、記憶を失い、遼の将となった石幻果こと四郎なんだから、もうね。

いや、個人的には、四郎が生きていてくれたことはうれしかったんですよ。瓊峨姫とのロマンスは、前作から気になってたから、次第に力をつけて立場を確保し、彼女と結ばれていく様とか、大変良かったし。

気づけば、耶律休哥との間に生まれる親子のような絆も素晴らしかった。

そう、今回はどちらかと言ったら、遼側というか、耶律休哥と石幻果(四郎)のお話だったんだよなあ。 でも同時に楊家のお話で。

精鋭たる耶律休哥の軍と戦えるとしたら楊家しかおらず、それはつまり六郎たちと四郎がぶつかり合うことになるわけで、それぞれがお互いの存在に気付き、それでも戦うことを止められないとか、ほんとに……もういっそ楊家は、遼へ行っちゃえばいいのにと思わずにいられない。

そのことは、最後にまた思ったなあ。宋のために戦い続けていたのに、後方のものに足を引っ張られて、裏切者扱いされた挙句、死に兵として戦場へ向かわされる。宋の思惑をわかっていながら、戦いに散っていく姿にもまた涙を流さずにいられなかった。

ただ、読後感がよかったのは、その後の話も読めたからかな。戦い、ぶつかり合い、殺しあったことで、いうなれば仇となった者同士が、決して恨むことなく向かい合うことができたのは、大切な人への思いを抱く者同士だからかな。

最後まで一気読みの面白さでした。

血涙(上) (PHP文庫)

血涙(上) (PHP文庫)

 

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血涙(下) (PHP文庫)

血涙(下) (PHP文庫)

 

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