大丈夫、積んでる

さうざんどますたーになれなくて

紅霞後宮物語 第五幕 / 雪村花菜

政治的な問題から、小玉が動けなくなっているのに、それが却って後宮内で彼女の勢力を伸ばすことになるというのが、大変面白い。

ただ、文林とのすれ違いが……いや、すれ違いというか、もともとあったことが表に出てきたということなのかな。お互い大切な存在で、言葉に出さずとも伝わるものがあるというのは、幻想だったのかしら。そうでないと思いたいけれど、ここで見えてしまった溝は大きい。

視野が狭くなっている文林が、このことに気付くけるのかは微妙なところだよなあ。

途中までが息の合った二人を思わせただけに、溝が見えた時がやるせなかった。ああ、つらい。

紅霞後宮物語 第五幕 (富士見L文庫)

紅霞後宮物語 第五幕 (富士見L文庫)

 

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殺し屋を殺せ / クリス・ホルム

殺し屋を殺す殺し屋ヘンドリクスと、彼を狙う殺し屋エンゲルマンの戦いを描くお話。

文章がこなれてないので、序盤は読みづらかったけど、ヘンドリクスの存在にエンゲルマンが近づき始める中盤からは一気読み。

正直、罪悪感から殺し屋を狙うようになったといいつつ、お金に目がくらむヘンドリクスの言動やら、エンゲルマンのよくわからぬ技能とか(どうやって忍び込んでるんだろう?)、設定にいろいろと引っかかるところはあるんだけど、怒涛のサスペンス展開のおかげで気にしてられなくなる。

ヘンドリクスの次の標的がわかるエンゲルマンが有利かと思ったら……ってところに、FBIが入り込んできて、対決もさることながら、FBIから逃れなければならないっていう展開は、次に何か起こるかハラハラというよりかはワクワクして読んでしまう。

隙はあるけれども、引き込まれるお話でした。

続編もあるらしいけど、どう続けるんだろ。

殺し屋を殺せ (ハヤカワ文庫NV)

殺し屋を殺せ (ハヤカワ文庫NV)

 

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大正箱娘 怪人カシオペイヤ / 紅玉いづき

万病に効く「箱薬」の謎を追うお話。

相変わらず、箱娘のうららにまつわるところは、謎なままですが、怪人については見えてきましたねぇ。……いやまさか思わせぶりなだけとか言わないよね、うん。

なにかと怪人の出現するところに遭遇する紺が危うくて、そりゃうららでなくてもハラハラしてしまいますが、好奇心だけではないまっすぐな視線が、彼女を救うというか、危険から逃れさせる力になってるんだろうなあ。

それにしても、燕也が恰好よく思えてきて困る。そんなわけないはずなんだけど、悪い男がふとした時に見せる弱さというか、素の部分とかにやられてしまう僕がいる。紺だからこそ引き出せたものなんだろうけど。

今回あまり箱娘の活躍がありませんでしたが、彼女に対する思惑が帝京に漂っているので、そろそろ対決したりするのかしら。紺がどう動くのかも気になる。

大正箱娘 怪人カシオペイヤ (講談社タイガ)
 

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ブラッド・スクーパ - The Blood Scooper / 森博嗣

やっぱり面白いなあ。

立ち寄った村で用心棒をするというシリーズ二作目ですが、これまでより深く人と関わるようになったことで、だいぶ変化が出てきました。不自由を感じるようになるあたり、世間を知ったとでもいうべきかしら。

でも、不自由を感じつつも、教わることも多く、ひとつひとつの経験を振り返り、咀嚼するように糧としていく、その思考が面白いし、はっとさせられますね。迷信とか宗教とかの考えは、そうだよなあ。

なるべく戦わないことを目標としていたけれど、さすがに戦わざるを得ない状況になってしまうわけですが、この殺陣のシーンがかっこいい。勢いと緊迫感があるのに、剣筋がスローモーションに感じる。紙一重の戦いを勝利してもなおわからないという剣の道は、いやはや大変なもんだ。

師匠の過去とかも気になるし、いつの間にやらやってくるノギさんも何者なのか気になる。

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ゲーマーズ!(7) ゲーマーズと口づけデッドエンド / 葵せきな

 恋人同士が修学旅行で距離を縮めようとしてたはずなのに、相変わらずすれ違っていくラブコメ
面白いのはリア充側にいる天道と上原がこじらせていくことですね。

普通、ああいう考えになるのは、自分に自信がないからこそだと思うんですが、どうしたって共通の話題では他の人たちに勝てない(って言い方もおかしいけど)から、及び腰になっちゃうんだろうなあ。
逆にぼっちで友達が少ない側である景太とかは、数が少ないからこそ大事に思ってるんだけど、オタクな話以外ではからきしだから、言葉や行動が足りなくなってしまうんだよなあ。
ほんのささいなすれ違いが、少しずつ積み重なっていくことで、想いを伝えようとした時に崩れていくラストは、これまで以上に衝撃が強い。

一体どうなることやら。

っていうか、振られたことでスッキリしたと思ってる千秋だけど、もし仮に天童と景太が……なんて思ってしまったら、今の気持ちはあっという間に崩れるだろうから、おお怖い。

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繰り巫女あやかし夜噺~お憑かれさんです、ごくろうさま~ / 日向夏

大学で非常勤講師をしている主人公だが、社務所に住み込んでいることから、生徒や周りの人たちから奇妙な相談を受けることがあり……という妖かし謎解き物語。

これは奇妙でゾワっとする。

背後に妖かしの存在が感じられる物語だけど、結局のところ何かをしているのは人なわけで、罪を犯す人の考えや行動こそが怖い。ファンタジーなところもありつつ、ホラー要素も強いミステリーってところかな。

語り手である主人公は、ぽわぽわしているので和むんだけど、世間知らずで、何やら暗い過去がありそうなので、周囲に妖かしの存在が感じられると危なっかしく感じて、変にドキドキしちゃう。

また主人公が住み込んでる社務所にいる人(?)や大家と呼ばれる神官さんは、人として描かれてるけど、本当にそうなのか?みたいなあやふやなところもあって、読んでて気持ちが不安定になる。

深いところまではいかないけれど、怪しい雰囲気がとても良いので、続編があったら読んでみたい。できれば、社務所内にいる人たちにフォーカスを当ててほしいなあ。

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ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているだろうか ファミリアクロニクル episodeリュー / 大森藤ノ

ダンまちは、外伝よりも本編を進めてくれないかなあ……なんて思いつつ、リューが主人公と聞いたら、手に取らざるを得ない。そして、期待通りの面白さだったけど、リューが主人公というよりかは、リューを中心とした周りの人たちのお話って感じでした

一番おもしろかったのは、娘をさらった輩が経営するカジノに乗り込むお話かな。いやでもこれ主人公は、むしろシルなんじゃ……と思わなくもなかったけど(悪女としか思えない)、そんな彼女を守りつつ、正義を行使するリューが格好良かった。

後半は、リュー(だけじゃなくルノアやクロエも)が「豊穣の女主人」で働くことになった経緯のお話で、なるほどこうやってみんなが仲間になっていったのかっていうのがわかったのは良かったけど、「豊穣の女主人」の主人であるミアの強烈なキャラクタがすごかった。まさかそんなファミリアに所属しているとは……。これ後にベルを巡って何か起きたりするのか、すっごい気になるところ。

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