大丈夫、積んでる

さうざんどますたーになれなくて

ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているだろうか ファミリアクロニクル episodeリュー / 大森藤ノ

ダンまちは、外伝よりも本編を進めてくれないかなあ……なんて思いつつ、リューが主人公と聞いたら、手に取らざるを得ない。そして、期待通りの面白さだったけど、リューが主人公というよりかは、リューを中心とした周りの人たちのお話って感じでした

一番おもしろかったのは、娘をさらった輩が経営するカジノに乗り込むお話かな。いやでもこれ主人公は、むしろシルなんじゃ……と思わなくもなかったけど(悪女としか思えない)、そんな彼女を守りつつ、正義を行使するリューが格好良かった。

後半は、リュー(だけじゃなくルノアやクロエも)が「豊穣の女主人」で働くことになった経緯のお話で、なるほどこうやってみんなが仲間になっていったのかっていうのがわかったのは良かったけど、「豊穣の女主人」の主人であるミアの強烈なキャラクタがすごかった。まさかそんなファミリアに所属しているとは……。これ後にベルを巡って何か起きたりするのか、すっごい気になるところ。

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86―エイティシックス― / 安里アサト

帝国の無人兵器に対して、共和国が開発した兵器は、共和国が人と認めていない第86区の少年少女が犠牲となる「有人」の無人機だった……死地へ向かう第86区(エイティシックス)の少年少女と、安全な後方で彼らを指揮する少女レーナの交流と戦いを描く物語。

おもしろかった! 

いわゆる差別する側とされる側のお話ということで、暗く重いお話になるのかと思いきや、思ったほどのことにならないのは、86の少年少女が達観していたことと(それ自体が重いんだけど)、レーナのまっすぐさがあったからでしょう。

いや、86の事実を知り差別を許せないとする少女の思いに、実は無意識のうちにしていた差別があるとか、そういうところはきついんだけど、ショックを受けながらも決してあきらめないレーナの頑張りが、指揮する隊のメンバーのみならず、読んでるこっちにも伝わるものがあるから、重苦しくならないんだろうなあ。

自分にできることを模索してやり遂げる姿に、熱いものを感じる。

すれ違う価値観と事実を直面して傷つきながらも、決して溝を開けることのなかったレーナの思いが、少しずつ86な人たちの心を引き寄せていき、夜、隊の皆が集まってちょっとした話をする、そんなつかの間の平和な時を過ごせるようになったところが素敵でした。

実は希望すらなかったわけですけど、それでも最後まであがき続けたレーナの思いが、ひとつの奇跡を生み出したというラストは、甘いとも思うけど、よかったです。

これぜひとも続編というか、鮮血の女王と呼ばれる時代のお話を読んでみたい。

86―エイティシックス― (電撃文庫)

86―エイティシックス― (電撃文庫)

 

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本好きの下剋上~司書になるためには手段を選んでいられません~ 第三部「領主の養女III」/ 香月美夜

冬のお披露目会とか貴族の子供たちとの交流をしつつ、印刷機の改良をするお話。

精力的に動いているけれど、個人的には、子供たちとの交流がよかった。楽しみながら学べる場が、とてもいい雰囲気。

むろん本を作るという自分のためではあるけれど、マインの興味に引きずられて、動く子供たちが成長したらどうなるのか楽しみ。 

ただ、ここまできても、やっぱりこの世界の人たちとの価値観の違いがあることを見せつけられてしまうのが重い。

ハッセの処分については、こればっかりは、どうしても慣れるのは難しい気がする。そこは周りの人が支えてあげてほしいものだけど、立場があるだけになあ……神官長もあまり厳しくしないでね。

って、そういえば、神官長ってすごい人なんだなあと随所で感じさせられるお話だった。だって、何かやろうとすると必ずと言っていいほど、先人として名が出てくるんですもん。そりゃ大いに頼られるわけで、これまで大変だったんだろうなと思うばかり。

今も今で、マインのしでかすことに頭を痛めているけれど、同時にマインからこれまでにない刺激を受けて、昔と変わってきている様子が見えることに、ニヤッとする。これはフランも同じか。

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ヴォイド・シェイパ / 森博嗣

めちゃめちゃ面白かった。

師の教えに従い山を下りた若き侍が、強さを求めて旅をする物語なんだけど、これまでずっと師匠と二人っきりで過ごしていたから、人と出会うたびに、ちょっとずつ変化していく。

たとえそれが今にも倒れそうな老婆であったとしても、その生き方や覚悟に影響を受けるというか、考え続けることで変化しつつ、そぎ落とされるものがあるんですよね。

いろいろな形の強さがあり、いろいろな形の生きる意味がある。そのことを考えていく思考回路が、とても面白い。やっぱ考えることって面白いんだよなあ。答えが出ないと大変だけど。

禅問答のように考え続けて、ただひとつの欲ともいうべき「強さ」を求めるゼンが、このあとどんな出会いをしていくのか、すっごい楽しみ。

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僕たちは同じひとつの夢を見る / 縞田理理

幻視に悩む大学生が、自分が視ているのは異次元世界らしいと知り、異次元世界人との共生を推進する機関でアルバイトをするお話。

この雰囲気いいなあ。異世界の人との距離感とか、幻視となる風景とか、スッと入ってくる。主人公の穏やかな(ちょっと暗い)性格と舞台となる筑波(の勝手なイメージ)が、物語にあっているのかも。

幻視のこともあり、自身の居場所について悩む主人公が、事象を通じて、友達と居場所を見つけていくところはよかったけど、ちょっと主人公周りの友人たちの行動が、大学生にしては幼く感じなくもない。

ただ、もしかしたらもっといろいろ深くなるお話になる予定だったんじゃないかなーと思えるところがあったので、そのあたりもったいなく思う。

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熊と踊れ / アンデシュ・ルースルンド

三人の兄弟と幼なじみひとり。二十歳前後の四人が、群から武器を強奪して銀行強盗をするという事実に基づいたお話。

緻密な計画を立てる長男についていけば間違いないと思わせる一方で、どこか隙がある仲間たちの言動にハラハラしてしまう。なんでそんな手がかりに繋がりそうなことをしちゃうかなーみたいな。

ただ、長男が引き締めることで、順調に計画を進めていくのに、その長男の心にほころびが見え始めると……ああ怖い。

これが下巻に入るとさらに大変なことになる。

まとめ役な長男のぐらつきが増えて、家族の絆を強いるようになり……ってところから、過去のアレコレが今の彼を生み出したんだろうなってことも見えて、やるせなくなる。

愛情がゆがんだことによる悲劇という単純なものではないんだろうけれど、でも、やっぱりやりきれない。

熊と踊る、ことはできても、踊り続けることってのはできないんだろうな。

それにしても、ほんと下巻に入ってからは、読む手が止まらなかった。すごいなーこれ。

熊と踊れ(上)(ハヤカワ・ミステリ文庫)

熊と踊れ(上)(ハヤカワ・ミステリ文庫)

 

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熊と踊れ(下)(ハヤカワ・ミステリ文庫)

熊と踊れ(下)(ハヤカワ・ミステリ文庫)

 

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侍女ですが恋されなければ窮地です / 倉下青

愛しの姫を意地悪な継母の手から逃した侍女が、姫の身代わりとして、優秀な傭兵隊長を国にとどめるべく奮闘するお話です。

これは大変たのしい。姫のためなら公妃だろうと楯突く侍女だけど、逆に姫を人質にされたら弱いわけで、脅しつつ脅されるという侍女との関係が、何気に好きだった。

というか、意地悪な継母という侍女の言い分は、別の角度から見ると国のために頑張るお人で、キャラが強烈だから誤解されるけど、実際は悪い人じゃないよなあ。かっこよかったし。

ってそっちはメインじゃなかった。

姫を呼び戻されては大変ってことで、侍女をしつつ、パーティでは姫に変装して、なんとか隊長を落とそうとする姿が無理無理すぎてニヤニヤしてしまう。

意味深な言動にドキドキしちゃって、これぜったい相手にばれてないわけないじゃん的なやり取りが大変良かったです。

これ続くのかなあ。スピンオフでもいいから、公妃メインの話を読んでみたい。

侍女ですが恋されなければ窮地です (一迅社文庫アイリス)

侍女ですが恋されなければ窮地です (一迅社文庫アイリス)

 

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