大丈夫、積んでる

さうざんどますたーになれなくて

侍女ですが恋されなければ窮地です / 倉下青

愛しの姫を意地悪な継母の手から逃した侍女が、姫の身代わりとして、優秀な傭兵隊長を国にとどめるべく奮闘するお話です。

これは大変たのしい。姫のためなら公妃だろうと楯突く侍女だけど、逆に姫を人質にされたら弱いわけで、脅しつつ脅されるという侍女との関係が、何気に好きだった。

というか、意地悪な継母という侍女の言い分は、別の角度から見ると国のために頑張るお人で、キャラが強烈だから誤解されるけど、実際は悪い人じゃないよなあ。かっこよかったし。

ってそっちはメインじゃなかった。

姫を呼び戻されては大変ってことで、侍女をしつつ、パーティでは姫に変装して、なんとか隊長を落とそうとする姿が無理無理すぎてニヤニヤしてしまう。

意味深な言動にドキドキしちゃって、これぜったい相手にばれてないわけないじゃん的なやり取りが大変良かったです。

これ続くのかなあ。スピンオフでもいいから、公妃メインの話を読んでみたい。

侍女ですが恋されなければ窮地です (一迅社文庫アイリス)

侍女ですが恋されなければ窮地です (一迅社文庫アイリス)

 

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リンドウにさよならを / 三田千恵

亡くなってから二年後に、通っていた高校の地縛霊として目覚めた主人公が、クラスでいじめにあっている少女と友達になるお話。

れいいなあ。かつての想い人を重ねて、同じ後悔をしたくないという思いから、少女を支えて、一方孤独だった少女が、幽霊とはいえ友達ができたことで、少しずつ変わっていく様子がとてもいい。

ふたりの関係が当たり前になるにつれて、募る思いが見えてるのに、そっと視線を外す主人公の複雑な気持ちとか、優しくて、ちょっと切なくて、青春だよなあ。少女に友達ができることを喜びつつ、寂しく思うところとかも。

「謎」がわかりやすかったこともあって、終盤はやや盛り上がりに欠けたけれど、心理描写や青春模様が作り上げる雰囲気は、最後まで良かった。

リンドウにさよならを (ファミ通文庫)

リンドウにさよならを (ファミ通文庫)

 

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Gene Mapper -full build- / 藤井太洋

遺伝子設計した稲に重大な問題が見つかったという報告を受けて、遺伝子デザイナーと企業のエージェントが原因究明にあたるお話。

面白い。これは映像で見てみたいなあ。拡張現実がフルに使用されてて、なんとなくはわかるけれど、実際にどう見えるのか見てみたい。

ともあれ、何が起きているのかわからない状態で、さらに問題が膨れ上がっていく展開に引き込まれる。

でもそんな問題を、登場人物がそれぞれ自分の立場で、全力を尽くすところがいいんだよなあ。プロフェッショナルな恰好よさというか、そういうところが好き。

ただ、もうちょっとサスペンス寄りになってくれると嬉しいかな。いい感じに盛り上がったところで、終わってしまったので、面白かったけど物足りないって感じてしまうのはもったいない。

Gene Mapper -full build- (ハヤカワ文庫JA)

Gene Mapper -full build- (ハヤカワ文庫JA)

 

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弱キャラ友崎くん Lv.3  / 屋久ユウキ

ゲームオタクが、人生をゲームに見立てて、攻略を目指すシリーズの第三弾。今回は、夏休みに友達と旅行に行ったり、意中の人とデートをするお話。

意外や意外。まさかこんな終盤になるとは思わなかった。

リア充モンスターな日南が出す課題がかなり厳しくて(個人的にそう思った)、それでも乗り越えていくから、てっきりそっちに向かうのかと思いきや、だった。でもこれ主人公の気持ちがすっごいわかるんだよなあと思う僕は、日南の目に止まることはないんでしょう。

日南との繋がりが絶たれなかったのは、主人公が勝るものがあったからで、ほんとギリギリのところでしたが、別の価値観を抱きながら、それを受け止めて自分なりに動いていこうとする二人の姿がとてもよかった。

正直これで終わってもいいんじゃないかと思ったけど、まだ続くみたいですね。

そうなると、ここまでこだわる日南の過去は気になるので、ぜひ見てみたい。

あとは、主人公の思い人との話がどうなるかだなあ。主人公を応援する立場にいきそうで……できれば、この二人には結ばれてほしい。

弱キャラ友崎くん Lv.3 (ガガガ文庫)

弱キャラ友崎くん Lv.3 (ガガガ文庫)

 

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やがて恋するヴィヴィ・レイン(2) / 犬村小六

ああ、もう、「今」この時だけだったら幸せなのになあ。

ヴィヴィ・レインを探す旅。ただそれだったはずなのに、気づけば大きな歴史の流れの中に巻き込まれてる。

なまじ弱い人を助けられるだけの力があることが、のちに不幸を生み出しそうなんだよなあ。なんせ、好きな人に会うためには、反乱を起こさねばならないんだから。

離れていても通じ合う心と「報酬」が素敵なだけに、少しずつ世界がそちらに動いていく展開に、やめてくれと言いたくなる。

またなあ、人造人間たるアステルもなあ。ルカと共に過ごすことで、いうなれば「普通」の幸せを感じて、でもそれにはタイムリミットがあることを知っていて。

彼は、彼女を妹として見てるんだろうけど、彼女は……まだ気づいてない思いを自覚していくとどうなるのかとか、もう、ああ、もう!

早く続きが読みたいです。

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魔王の俺が奴隷エルフを嫁にしたんだが、どう愛でればいい?(1) / 手島史詞

ひょんなことから参加したオークションで、エルフに一目ぼれして全財産をはたいてしまった魔術師のお話。

ちょーーーーーーーーにやにやした。

研究一筋で、ずっとひとりで生きてきたから、うまくコミュニケーションが取れなくて、内心とぜんぜん違うことを言って、嫌われちゃうんじゃないかとあわわしまくる展開が、大変楽しい。

奴隷として競り落としちゃったものだから、ちょっとしたことでエルフもおびえるしで、あわわとビクビクの関係ににやにやが止まらない。

それでも、時間をかけて少しずつ距離感変わっていくのが、またいいです。やっぱ人と過ごすことって、価値観の違いがあるから、ショックもあれば気づきもあるんですよね。個人的には前半の雰囲気がすっごい好き。

終盤の動きは、ちょっとシリアスに寄りすぎかなと思いますが、全体的にかわいくほほえましいお話でした。続きが出るなら読んでみよう。

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リボルバー・リリー / 長浦京

関東大震災後、陸軍に家族を殺されて追わていれる少年が、かつて美しき諜報員として名をはせた「リボルバー・リリー」に助けを求め、たった二人で、陸軍の手から逃れようとするお話です。

VS帝国陸軍1000人
たった二人の六日間戦争 

って文句はすごいなあ。でも実際そうなんですよ。

陸軍が執拗なまでに追ってくる理由がわからないまま、ただひたすら逃げていく。ちょっとした手がかりからすぐに追いつかれ、恩義を感じてくれてる人ですら、追い詰められたら裏切るから、一息つく暇もほとんどない。

家族を殺され、トラウマを抱えていた少年が、次第にたくましくなるのも、そりゃそうだと納得。

でもこれって一人だったら、途中であきらめてただろうなあ。特になんら関係があるわけじゃない二人が、死線を潜り抜けるたびに、絆らしきものを深めていく、その関係性がよかったです。

それにしても人が死にすぎじゃないか。この人は大丈夫だろうと思ってた人も、思わぬ形で死んでいくから油断できない。

ということも含めて、面白かったです。

リボルバー・リリー

リボルバー・リリー

 

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