大丈夫、積んでる

さうざんどますたーになれなくて

また、桜の国で / 須賀しのぶ

日本大使館の外務書記生の目を通して、第二次世界大戦時のポーランドを描く物語。 


これはすごかった。

第二次世界大戦ナチス・ドイツが侵略してくるということが何を意味しているかというのは、わかってはいたけれど、日本人外交官の目を通して語られる物語が、あまりにも重い。むろん一方的な視点なんだけど、なんで日本はドイツについてしまうんだと思ってしまう。

ポーランドという国については、寡聞にして知りませんでしたが、こんなにも過酷な世界を生きていたとは……奪われ、侵略されてきた歴史があるからこそ、守るために闘い、取り戻すために命を懸ける。その覚悟に目頭が熱くなる。

まさに

おまえがポーランドから見る世界は過酷かもしれないがきっと美しい。

だと思いました。

このお話を読めてよかった。

また、桜の国で

また、桜の国で

 

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宝石商リチャード氏の謎鑑定 天使のアクアマリン / 辻村七子

美貌の宝石商リチャードとバイトの大学生正義が宝石にまつわる事件に遭遇するシリーズの第三弾。

これまで謎だったリチャードの背景がちょっとだけ見えてきました。それだけ正義に対して心を開いてきたってことだよなあ。

相変わらず直球でリチャードをほめる正義だけど、そんな彼の言葉をまんざらじゃない感じで受け止めるリチャードがかわいいったらない(ツンとしてるけど)。

にしても、正義の言葉は、周りから聞いたら誤解されるよなあ。カフェで二人のテーブルについてしまったバイトさんの動揺がよくわかる。

だからこそ、いつも以上に、正義の恋を押すリチャードの行動には、ちょっと疑問を覚えたけれど……近づきすぎたがゆえになのか、過去のことが知られてしまったからなのか。「大切な人」だからこれ以上は、なのかもしれない。

宝石にまつわるお話もいいけれど、二人の関係がどうなっていくのかが気になります。

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佐伯さんと、ひとつ屋根の下 I'll have Sherbet!(1) / 九曜

Web小説の時に読んでから、大好きな作家さんの作品です。

高校二年の進学を機に一人暮らしをすべく引っ越したら、同じく一人暮らしをしようとしていた女子高生とバッティングして、ルームシェアをすることになる、というお話。

何が楽しいって、二人の関係ですよ。クールであろうとする男の子と、クールな一面を崩したい女の子のやり取りに、にやにやが止まらない。ルームシェアのことは周囲に隠してるのに、学校で会ったら、つい……みたいなシーンが大変楽しい。

からかい上手というには、ちょっと無邪気すぎるんだけど、それがまた予想もつかない行動(いや、予想できちゃうんだけど)をしてくれるので、どうしたって動揺しちゃう。でも、壁は決して崩そうとしない男の子の頑張りがいいです。

基本的には男の子パートで話が進むので、なんとかギリギリのところでかわしてるように思えるんだけど、たまに見える女の子パートで、彼女がギリギリのところで踏み込んでないのが見えて、年下といえど、やっぱり女の子にはかなわないんだなあと思う次第です。

周囲から見たら、大変仲良く見えるのに、それでも付き合ってませんよ、顔見知り程度ですよという振りをし続ける距離感が大変良いです。

この後も楽しみだなあ。

佐伯さんと、ひとつ屋根の下 I'll have Sherbet! 1 (ファミ通文庫)

佐伯さんと、ひとつ屋根の下 I'll have Sherbet! 1 (ファミ通文庫)

 

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あしたはれたら死のう / 太田紫織

自分は自殺未遂をしたのだという。だが、数年分の記憶がないため、なぜ自殺しようとしたのかわからない女子高生が、SNSに残された日記「あしたはれたら死のう」から、かつての自分を探す物語。

前半の雰囲気がとても好き。

記憶を失ったことで、以前とは異なる性格になり、そのことを回りが受け入れ難くなるという人間関係のぎくしゃくさとか、他人のよそよそしさに気づきながらも、かまわず進んでいくところとか、いい感じでした。

自分は自分と思いながらも、やはりかつてどう思っていたのかを気にし始めたのは、同級生の男の子も同じタイミングで亡くなったってことなんだろうなあ。いわば心中なわけで、そりゃ理由が知りたくなるとは思います。

惜しむらくは、見えてくる事実が、うーん?って感じるところかなあ。もっと家族と向かうような話になるのかと思ったらそうでもなかったし、前半と後半がしっくりかみ合わない感じを受けたのが残念。

あしたはれたら死のう (文春文庫)

あしたはれたら死のう (文春文庫)

 

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アクセル・ワールド(20)(21) / 川原礫

ついに始まる領土戦。

いやあ、すごい盛り上がりだった。

準備万端で仕掛けたけれど、ってところから、あっという間に追い詰められていくから、心意もさることながら、手の内がわからないことのアドバンテージって大きいよなあ。

あっちにも事情はあるんだろうけれど、説明してくれないから、そりゃ戦うしかなくなるでしょうと思わんばかり。

にしても、そこいらで熱い戦いがあったなあ。メタちゃんとトリリードの加入は、ほんと大きかった。ギリギリのところで切り抜けられたのは、間違いなくこのふたりのおかげ。

ひとまずの決着はついたけれど、かえって謎が増えた気がするので、早いところ解明してもらいたいです。

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アクセル・ワールド21 -雪の妖精- (電撃文庫)

アクセル・ワールド21 -雪の妖精- (電撃文庫)

 

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京都寺町三条のホームズ / 望月麻衣

ホームズとあだ名される骨董品店「蔵」の息子・大学生の家頭清貴と、「蔵」でバイトすることになった女子高生の真城葵が、京の町で遭遇する謎を解くお話。

京都を舞台にされると、その風景を見に行きたくなります。実際にこういう場所があるんだろうなあ。歩いてみたいと思うばかり。

骨董の話とか、なかなかにいい雰囲気でしたが、次第にホームズさんがその力を発揮していくと、謎解きよりも恋愛にシフトしていった気がしました。

鑑定できるわ観察眼鋭くてホームズだわ気を使える優しさがあるわで、かっこよすぎてどうしてくれよう。

はじめは、バイトするきっかけとなった人間関係の問題から、そんなに意識してなかった葵が次第に……というのは仕方ないと思います。傷ついた彼女を守るがごとく登場した時には、惚れるしかないと思った。

個人的にはもうちょっとミステリ色が強いとうれしいんだけど、これはどっちかといったら恋愛ものなんだろうな。

京都寺町三条のホームズ (双葉文庫)

京都寺町三条のホームズ (双葉文庫)

 

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信玄忍法帖 / 山田風太郎

信玄の死を隠したい武田と、信玄の死を確認したい徳川が、それぞれが間諜として忍者を放つお話。

早々に退場した信玄だけど、その存在感といったらないな。

恐らくは死んでるであろうと思いながらも、生きている可能性がわずかでもあるだけで動けなくなる家康の必死さが、そう感じさせるのかもしれない。

信玄には、6名の影武者がいたということで、徳川の忍者が暴く度に、仕留めるも影武者も失うという戦いが続き、それがまた歴史の流れとうまく絡み合うんだよなあ。

歴史の裏側でこんなにも忍者が暗躍していたのかと、思わず納得してしまうものがある(むろん創作なんだけど)。

武田側もやられてばかりでなく、徳川に仕返しをして、これまたグロい忍法合戦なわけですが、歴史の流れからしたら、武田は徳川に敗れるわけだから……そうなんだよなあ。

勝頼が信玄の遺言どおり、死を三年隠しきれたらどうなったんだろうなんて考えてしまいました。

信玄忍法帖 (角川文庫)

信玄忍法帖 (角川文庫)

 

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